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Suguru ito

​Suisse based pianist • fortepianist


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​MEMORANDUM • CONTENTS ~ Fanny Mendelssohn-Hensel|タンポポあるいはポポンタ|Une occupation inutile|伊藤悠美 YUMI ITO Vocals (Vimeo)|みだれ箱|メトロノーム奇談の時代|パウ・カザルス国際音楽祭 (Vimeo)|夜話 Online Conversations|常不在|Character first, ability second |D or E, that is the Question|酒神礼讃|Mozart & Don Cacarella|J. S. Bach & Beer|Clavicembalo o Piano-Forte|The anniversary of Caroline Esterhazy‘s death|ピアノ奏法の断片|Deuxième ballade Op. 38, Sonate Op. 65 等にまつわる事情|Beethoven ad libitum|鼠小僧次郎吉と跡隠しの雪|覚書 2|覚書 1

Fanny Mendelssohn-Hensel

21/6/2021

 
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Photo ©︎ FAE|Fanny & Felix Mendelssohn - a concert under the motto « Feder & Bogen » with the German-British actor Thomas Douglas (reading) • Anna Tchinaeva (vn), Anna Tyka Nyffenegger (vc), Suguru Ito (p) • hosted by Zurich Chamber Orchestra on 17/6/2021 • Programme; Fanny: Januar (Klavierzyklus “Das Jahr”, 1841), Felix: Piano Trio in D minor Op. 49 (1839), Fanny: Piano Trio in D minor Op. 11 (1847), Six Mélodies pour le piano N° 2 Op. 4 (ca. 1835)

女であるがために稀代の異才が抹殺される理不尽は音楽史においても例外ではなく、その不当にも程がある。ドイツの大作曲家フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847) にファニー (1805~1847) という4歳年上の姉がいたことを我々はかろうじて知っていても、彼女の人生と音楽について語れるのかと問われれば、答えは否である。


裕福な銀行家とアマチュア・ピアニストの長女として生まれ、若くして著名な教育者たち (フランツ・ラウスカ、カール・フリードリヒ・ツェルター、マリー・ビゴー、ルードヴィヒ・ベルガー) の薫陶を受けピアノと作曲法に熟達した神童ファニー。皮肉なことに、思春期を過ぎる頃になると最愛の弟フェリックスの華々しい活躍の影に追いやられてしまう。女性の天職は “主婦たること” にあると真顔で説く父アブラハムの手紙を彼女はどんな思いで読んだのだろう?
「いくらお前の天分が優れたものであろうと、またお前がフェリックスと肩を並べる技量を持っていようと、弟に音楽家の道を譲ることに異存はあるまい」
あの時代の理念に従うなら、女性にとっての音楽や文芸は少女時代に習得される教養の一部でしかなかった。


1829年秋、24歳のファニーは画家のウィルヘルム・ヘンゼル (1794~1861) と5年に及ぶ遠距離恋愛を経て結婚、ひとり息子のセバスチャン・ルードヴィヒ・フェリックス (1830~1898) を出産した。3つの名前はファニーが敬愛して止まない3人の作曲家にちなむ。さいわい夫からの精神的な支えもあって、引き続き私的な音楽活動に専念することは叶ったのだった。


ベルリンのライプツィヒ通り3番地にそびえるアブラハム・メンデルスゾーン邸 (註: 1737年に建立された一種のバロック宮で、1825年から26年間メンデルスゾーン家が所有したあと国が買い取り、1899年に撤去された。現在、その跡地には連邦参議院議事堂が建っている) は結婚後もファニーの住居に変わりはなく、300人は収容できる大広間や広大な庭園に建てられたガーデンハウスで定期的に催される “日曜音楽サロン” は彼女にとって唯一の公開演奏の場となった。来賓客を調べると、シューマン夫妻、カール・マリア・フォン・ウェーバー、ニコロ・パガニーニ、フランツ・リスト、ヨーゼフ・ヨアヒム、ヘンリエッテ・ゾンターク、シャルル・グノー、ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ、ハインリヒ・ハイネといった名前が見える。こうした名士たちの多くは出演者でもあったから、絢爛豪華なサロンの名声は瞬く間に広がっていった。そもそもファニーの出演が父親から許されたのは、音楽サロンが会員制にもとづくプライベートな企画だったからだろう。(註: 彼女がピアニストとして自宅以外の公のコンサートで正式にデビューしたのは父アブラハムが亡くなってから3年後、1838年のことであり、33歳のファニーはフェリックスの『ピアノ協奏曲第1番 作品25』を演奏している。)


1831年から日曜音楽サロンの主宰者も兼任したファニーは同時代の新曲のほか、おもにバッハとベートーヴェン (『ピアノトリオ』、『ピアノ協奏曲』、『ヴァイオリン協奏曲 作品61』、『トリプルコンチェルト 作品56』、『ディアベッリ変奏曲 作品120』、『オペラ: フィデリオ 作品72』からの抜粋など) の再演に力を注ぎ、ときには指揮者としてグルックの『オペラ: オルフェオとエウリディーチェ』を上演したり、フェリックスの『オラトリオ: 聖パウロ 作品36』や自身の『管弦楽序曲』、『カンタータ』などオーケストラと合唱を伴う大規模な作品の演奏も手がけた。その傍らで、彼女がいかにフェリックスの良き助言者であり、固い姉弟愛の絆で結ばれていたかは膨大な数の往復書簡から垣間見ることができるのであるが、じつに不可解なことに、フェリックスはファニーの作品が出版されることには決して賛同しなかった。母レアに宛てた手紙では、ファニーの作曲活動への過大評価を戒めるような文脈が読み取れる。
「音楽界で作曲家として認められるには、次から次へと作品を発表できなければならないし、手慰み程度の1曲や2曲を公表してどうにかなるというものではないのです。しかしこのことについてファニーと夫のヘンゼルには何も言わないでください、誤解を招いてはまずいから」


結果的にファニーの音楽を正当に評価し賞賛を惜しまなかったのは夫だけだったのではないかという気がしてくる。1846年にようやく『6つの歌曲 作品1』と『ピアノのための歌曲集 作品2』が出版された際、ファニーは日誌にこう記している。
「やっとフェリックスから手紙が届いた。そして気持ちをこめて祝福してくれてるのだけれど、まあそりゃ彼にしてみたら胸の奥では了承しがたいものがあるのでしょう、でもその分、よりいっそう彼からの優しい言葉が嬉しい」
ちなみにベルリンの出版社から上記の作品1と2の打診があったとき、彼女はフェリックスにはいっさい相談していない。


1847年5月14日、フェリックスの『カンタータ: 最初のワルプルギスの夜 作品60』のゲネプロを指揮している最中に脳卒中で倒れたファニーが42年の生涯で残した作品は500曲を優に超えるといわれる。生前に公表された作品はわずか数曲。


突然の姉の死に憔悴したフェリックスは自作の出版社であるライプツィヒの老舗ブライトコップフ・ウント・ヘルテル社と交渉しファニーの遺作公開に踏みきる。こうして1850年没後出版された4曲のうち、死の年に書かれた『ピアノトリオニ短調 作品11』(草稿は紛失) は近年いろいろな奏者に取り上げられ頻繁に演奏されている。わたしも先週この遺作を弾く機会に恵まれた。各楽章の合間に舞台俳優のトーマス・ダグラスがメンデルスゾーン家の文通を朗読し、さらにプログラム前半にはフェリックスの『ピアノトリオニ短調 作品49』を演奏した。彼のトリオが名作の誉れ高いことに異論はない。しかし、深林にひっそり咲く大輪の花のように潔く生きたファニーのピアノトリオの慄くような第1楽章が鳴り響くと、その音のうねりが蔵する霊感と熱気のオーラは我々を圧倒し、会場に居合わせた誰もが無位無冠の天才作曲家に首(こうべ)を垂れたのであった。


二人の書いたピアノトリオの調性が同じニ短調であったこともシンボリックに感じるのだが、ファニーの死から6か月後、フェリックスもまた予期せぬ脳卒中で帰らぬ人となった。
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Fanny Mendelssohn-Hensel at the piano during her stay in Rome; a pencil drawing by August Kaselowsky, 1845

タンポポあるいはポポンタ

2/6/2021

 
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Dandelion seedhead at sunset|Photo ©︎ FAE

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Une occupation inutile

17/5/2021

 
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First page from Maurice Ravel‘s Valses nobles et sentimentales pour piano (©︎ 1911 Éditions Durand, Paris) with a quotation of Henri de Régnier (1864-1936), French writer.|Collage ©︎ FAE

モーリス・ラヴェルの『高貴で感傷的なワルツ Valses nobles et sentimentales』(1911年出版) を弾くピアニストなら必ず目にすることになる一節。アンリ・ド・レニエの小説からの引用らしいが、これをとびきりの傑作の冒頭にわざわざ印刷させたのは作曲者の照れ隠しか、あるいはひそかなモットーだったのか。いずれにせよ、自分にとっての畏敬の人が「至福で常に新しい無益な没頭」に酔い痴れる粋にしびれる。



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伊藤悠美 ~ Vocals

5/1/2021

 


YUMI ITO 伊藤悠美 (vocals) @ SRF スイス国営放送/Dec. 2020

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The destruction of Earth, the only true kingdom we humans have; the committal of a friend to a psychiatric hospital; the heroin-death of her unknown neighbour: Yumi Ito weaves into her music stories about society - stories that matter, regardless of how large or small, how bright or dark they are. The sound is equally diverse and presents itself as an amalgam of several styles. What might seem tricky, really isn’t: the musician, composer, producer and arranger with Japanese and Polish roots expertly navigates a clear stylistic path, based on hundreds of hours of practice. Like a Zen master she observes, classifies and writes down events from a distance – precise, concentrated and wise. Yumi Ito lives and works in Basel, performs regularly all around the world and has shared the stage with artists such as Al Jarreau, Becca Stevens, Nils Petter Molvaer and Mark Turner. Her own art includes jazz, art-pop, electronica, free improvisation and neo-classical music, flexibly performable from solo to orchestra, while - of course - always telling a story.
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Referenced from: https://www.yumiito.ch/]

みだれ箱

11/11/2020

 
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Et le vent du nord les emporte / Dans la nuit froide de l'oubli / Tu vois, je n'ai pas oublié / La chanson que tu me chantais (poème: Jacques Prévert)|Photo ©︎ FAE

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メトロノーム奇談の時代

8/9/2020

 
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Beethoven: Grosse Sonate für das Hammerklavier, beginning of the first movement, Viennese first edition by Artaria, September 1819|Photo ©︎ FAE

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パウ・カザルス国際音楽祭

5/8/2020

 

伊藤英 (piano) @ ラジオ•カタルーニャ from diogenes•com on Vimeo.

バッハ: 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV 1007
ベートーヴェン: ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第8番 ト長調 作品30/3
チャイコフスキー: ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50『偉大な芸術家の思い出に』

アンコール|クライスラー: ウィーン風小行進曲

夜話

8/6/2020

 
Online Conversations with Suguru Ito ©︎ Sei Morino|April 2020 [抜粋]
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Photo: The pianist‘s bed ©︎ FAE

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常不在

2/6/2020

 
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Photo ©︎ FAE

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Character first, ability second

11/4/2020

 
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@ Music School in Matsumoto with Dr Shinichi Suzuki in 1977 - "Character first, ability second" (一に人物、二に技量) was the mantra of this old master‘s life.

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